The Method of Urban Safety Analysis and Environmental Design

house-b.gif (14947 バイト)What is MUSE ?

第二次世界大戦後,世界的に大規模な建設の時代がおとずれ,ニュータウンの建設や再開発が行われるようになると,都市をデザインする上で従来の都市計画技術では対応できなくなってきた.そこで,丹下健三研究室の東京計画1960,Smithsonの都市論など,人体の構造,植物の幹,枝,葉といった有機体のアナロジーによって,都市の機能を統合しようという動きが現れた.しかし,1970年代には,大気汚染・水質汚濁などの公害や交通渋滞などの都市問題が浮き彫りになり,夢をもたらすべき都市づくりに対する気運が薄れていく.生態的都市論が叫ばれた1960年代から40年近くの年月が経ち,兵庫県南部地震が発生し,この複雑化した社会の脆弱さが露呈してしまった.兵庫県南部地震後に発生した多くの都市問題や災害は都市機能が麻痺した結果であった.この複雑化した高度情報化社会において,防災的な観点から,あるいは21世紀の環境問題に対処するために,改めて都市を有機的な生態系として見なし,解析する手法は今後の都市づくりのために大変有効であると思われる.

これらのことを踏まえて,ここで提案する防災環境都市デザイン手法をMUSE(The Method of Urban Safety Analysis and Environmental Design)と名づけた.MUSEとは,都市をひとつの閉じた有機的な系に見立て,8種の物的要素に分類し,都市の様相を可視化することにより,それぞれの要素あるいは要素間相互の関係性から都市を解析し,設計およびシミュレートするための手法である.

MUSEの要素は次のように分類される.

Element:0 仮想壁 Imaginary Wall

Element:T 主体 Subject (Physical Dynamic Element)
        人間,自転車,自動車,鉄道等

Element:U 形態要素 Shape (Physical Static Element)

    a. パス Path(Leading Path,Secondary Path)
        幹線道路,街路,小路,裏道等

    b. エッジ Edge
        海岸,鉄道線路の切通し,開発地の縁,壁等

    c. セル Cell
        街区,ブロック等

    d. ヴォイド Void
        公共空間の広場,学校の校庭,駐車場等

    e. コア Core
        ライフラインの拠点施設等,役所,病院等

Element:V ウェブ Web (Systematical Element)
        ライフラインの配管,共同溝,電線等

Element:W 自然 Nature (Natural Element)
        水辺,河川,緑地,農地等

 

house-b.gif (14947 バイト)Element:0 仮想壁 Imaginary Wall

ある地域を分析する時に,それらを閉じた系として考える必要がある.通常は行政区域で閉じるのが都合が良かろう.また状況に応じて規模を変えることも可能である.日本全国を対象としたマクロゾーネーションを検討する時には東海地方,近畿地方など大きく分ける必要があるであろうし,都道府県単位になることも在り得る.市,区,町村,町丁目,学校区など状況に応じて規模を変えていけば良い.その時にその地域を閉ざす役割をするのが仮想壁である.

仮想壁は地域の境界上に想定された鉛直面である.この仮想壁によって地域はその内部と外部に区分される.地域を取り巻く仮想壁のある部分を限定することにより断面積あたりまたは距離あたりの交通路数,交通量,物資の流通量,人口移動量等を計測することが可能になる.観察者は仮想壁を肉眼で見ることができないが,モニターや装着型映像装置上に視覚化することにより,ある地域の各種情報を感覚的に把握できるようになる.

Iwall-1.jpg (212242 バイト)

 

house-b.gif (14947 バイト)Element:T 主体 Subject

都市を舞台と考えれば,一人一人の人間は,そこで演じる役者であり観客でもある.都市という人工的な環境は見る・見られるという両方の立場を共有している一人一人の人間のために造られてきた.都市とは物的環境と人間活動を積分したものであり,政治・経済・防災・娯楽等都市活動のほとんどは,一部の地球環境中心的な考えを除いて,人間を中心としたものであろう.そこでMUSEにおける主要な第一要素として都市の主役である主体を定義する.主体とは人間であり,その人間の移動手段である自転車,自動車,鉄道等を指す.それらは多くの場合移動可能な点として扱われる.多くの場合この主体の移動によりエネルギー,物資,情報等が伝達されるため,この主体という概念は都市における血液のようなものでもある.

 

house-b.gif (14947 バイト)Element:U 形態要素 Shape

MUSEは,主に都市空間を取り扱う手法である.そのため経済,政治,哲学など形而上学的なものではなく空間的な要素(位置,長さ,高さ,幅,面積,体積,形等の属性を持ち,接触可能な物的なもの)を対象としている.この形態要素とは都市の地上に存在し,空間上で移動したり操作したりすることができる要素である.

U-a. パス Path(Leading Path,Secondary Path)

パスとは,街路,散歩道,運送路,運河,鉄道など人々の通行路である.形態的には線状であり,ネットワーク化された要素である.地上においてパスは,主体の公共的な通行路であり,それに沿って並木道のように自然要素を組み込むことも可能である.また通常その地下にはウェブが組み込まれ,ライフラインのネットワークとも密接にからんでくる.防災的には道路下に共同溝を設け,ウェブを組み込むのが有効とされている.以上のことからパスを生態的に例えれば,ものの通路である血管系であり,それらを保護すべき骨格系であり,情報経路である神経系でもあり,重要な要素である.パスは,その規模,役割に応じてさらにリーディングパスとセカンダリーパスに分類される.リーディングパスとは主に幹線道路を指し,地域間を結び,ライフラインの主要経路ともなる.また災害時には延焼遮断帯となることもあり,被災者を避難場所へと迅速に正確に導く役割もするため,計画する時にはわかりやすさなどを考慮する必要もある.一方,セカンダリーパスとは小路,裏道など比較的規模の小さい道路であり,個々の家庭にとって日常生活に密着した存在である.これは都市における毛細血管のようなもので,幹線道路から分岐して各家庭に様々なものを供給する役割をする.

IIapath-1.jpg (310437 バイト)

U-b. エッジ Edge

エッジとは,観察者がパスとしては用いない,あるいはパスとはみなさない,線状あるいは面状の要素をいう.つまり海岸,鉄道線路の切通し,開発地の縁,壁など,2つの局面の間にある境界であり,連続状態を中断する線状のもののことである.これは点を示す座標軸というよりは,人々が領域を知るために横側から参照するものである.これは多少の通り抜けのある障壁かも知れないし,2つの地域を相互に関連させる継ぎ目かも知れない.この要素は,防災的には延焼遮断の役割が大きいであろう.ある都市機能を持つエッジとしての壁状の要素を,木造密集地域等に挿入することにより,延焼危険性を低減させることも可能である.また港湾など平常時には歩行者にとってネガティブなエッジとされる場所も,災害時には水路として主要なパスになることもある.

IIbedge-1.jpg (76596 バイト)

U-c. セル Cell

セルとは街区(ブロック)である.ほとんどの都市は区画整理され街区と街区の間を道路が通っている.そのような街区は都市においてセル(細胞)のようなもので,MUSEにおいては面的な最小単位と位置付けた.街区の中は建物が建ち並んでおり,それらの建物は構造・建築年代等の属性を持っている.それら建物の倒壊危険性と街区の地盤条件によって街区ごとの建物倒壊危険度や地震が発生した時の被害棟数を想定することが可能である.街区の中には建物に占有された部分と駐車場のように空地となっている部分があるが,それらの空地は私有地である場合が多く,災害時においても中に入れないものと仮定し,基本的にはヴォイドとは区別したマス(Mass)として考えることとする.セルは,面積,建物棟数,建物倒壊危険度,空地率,想定死亡者数等の属性を持っている.

IIccell-1.jpg (165847 バイト)

U-d. ヴォイド Void

ヴォイドとは,都市の中の公共的なオープンスペース,広場,駐車場,学校の校庭,空地等を指す.パスを幅を持たないネットワークとして考えれば,建物に占められたセルを反転したものと考えられるかも知れない.しかし基本的には,ヴォイドとパスは独立したものとして考え,ヴォイドは閉じた面として考えることとする.ヴォイドは主体にとって,都市の中で憩う場,公共的な活動をするために集まる場,災害時には避難をする場など公共空間として様々な機能を持つ重要な場である.災害時には,パスと共に都市の流通にとって重要な役割を担い,パスとのネットワークの良し悪しによって,災害時におけるヴォイドの機能は大きく左右される.

IIdvoid-1.jpg (131052 バイト)

U-e. コア Core

コアとは,役所,病院,消防署,警察署,ライフラインの拠点施設等,都市生活において核となる重要な機能を持つ各施設を指す.それらは点として扱われ,位置情報を持つ.災害時には,各施設の持つ,収容人員数,駐車可能数,空きベッド数,出動可能消防車数などのパラメータが有効となるであろう.

IIecore-1.jpg (208269 バイト)

 

house-b.gif (14947 バイト)Element:V ウェブ Web

地上における物的要素である5種類の形態要素に対し,ネットワークシステムが重要な意味を持ち,必ずしも地上に設置されてはいないライフラインなどの要素をウェブと定義した.ウェブは,ライフライン(上下水道,ガス,電気,情報通信等)の配管,共同溝,電線等を指すが,衛星通信等の不可視な要素も含まれる.

IIIweb-1.jpg (175955 バイト)

 

house-b.gif (14947 バイト)Element:W 自然 Nature

都市の中には,水辺,河川,緑地,農地等,様々な自然の要素が存在する.それらは,災害時における生活用水,消火用水,延焼遮断帯等として防災的に重要であるだけでなく,都市におけるヒートアイランドの防止などの環境面や,快適な公共空間をつくるなど日常生活においても重要な要素である.これらの自然要因は都市のアイデンティティを形成していることが多く,それらをうまく生かすことが,都市を計画する上では必要不可欠である.

 

musebtn.gif (126 バイト) 00-Welcome to the MUSE System